【数学科卒業生が解説】解析学とは?何に使うか?ざっくり概要をわかりやすくまとめ【参考書も紹介】

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こんにちは、くれあです。
本記事では解析学で学ぶ内容について解説します。

この記事で解決できる疑問
  • 解析学はどんなことを学ぶのか知りたい
  • 解析学って何に役に立つの?
  • 勉強しやすいおすすめの解析学の参考書を探している

私自身、大学数学科→大学院数学専攻を卒業してます!
子供の頃から算数・数学が好きで大学&大学院と6年間高度なレベルの数学を学んできました。

大学レベルの数学は高校までの数学とはギャップがあり、躓いてしまう人も少なくありません。
また、独学で数学を学びたい方も何から手を付ければいいのか分からないことも多いです。
大学レベルの数学を学ぶギャップについてはこちらの記事でも紹介しています。

そこで、大学レベルの数学の最初の一歩のところをお話ししようと思います。
数学科で学ぶ数学は大きく分けて代数学・解析学・幾何学の3分野に分かれます。
この記事ではそのうちの1つである解析学について紹介します。

皆さんの大学数学を学ぶギャップを埋められるお助けになれれば幸いです。
それでは見ていきましょう。

解析学とは

一言で言えば…
微積分や級数の操作により関数などの性質を紐解く数学の分野

高校までで習った高校での微分積分の厳密化から始まり、
微分積分や級数を用いて関数の性質などを追っていきます。
関数の性質を通して微分方程式やフーリエ解析、複素解析など様々な発展的な研究が進められています。
(発展例は枝分かれのように様々な分野がありますが、ここでは個人的によく名を聞くものを挙げさせていただきます)

解析学の最も基本的な部分は「微分積分学」と呼ばれ、数学科で大学1〜2年生に学びます。
微分積分学を学ぶことが数学科の入学後の壁の1つとなっていることでしょう。

微分積分学で学ぶこと(大学1〜2年)

主に微分積分学で学ぶことを大まかですが紹介します。
まずは高校数学で触れてきた実数、極限、微分積分の厳密な定義などを学ぶところから始まります。

実数の構成(連続性)

整数や自然数、有理数など当たり前のように扱ってる実数ですが、
まずその実数は何なのか、どのように構成されているのかを理解するところから始まります。

特に大事なのは実数の連続性で、
有理数を大きさの順に一直線に並べた時にできる隙間を
さらにその隙間を有理数で並べることができる性質です。

実数のイメージ

ただこれは感覚的な理解であり、
公理として数式を用いた言葉で連続性が意味付けられています。
実数の連続性にはいくつか公理があり、本や講義によっては違うものが扱われます。
(ただ、それらの公理はそれぞれ同値になります。)

その実数の連続性公理のうちの1つがこちらです。

実数の連続性公理(上限の存在)
空でない上に有界な実数の集合には上限がある。

長くなってしまうので説明は省略しますが、この公理を理解するには「有界」「上限」といった数学用語の意味をしっかりと理解する必要があります。
気になった方は、この動画の解説が分かりやすいのでオススメです!

極限の厳密な定義

さらに高校の数学IIIで習った「極限」も厳密な定義を学びます。
こちらの記事でも紹介しましたが定義はこちらです。

極限(\(ε-N\)論法
数列\(\{a_n\}_{n=1}^{\infty}\)が収束するとは,任意の\(ε\)に対して,以下を満たす\(N\)が存在することである:任意の\(n\geq N\)に対して

$$|a_n-α|<ε.$$

初めて見ると「???」さっぱり分からないことでしょう…(^^;;)
ただ「\(\forall\):任意の(すべての)」「\(\exists\):ある」など論理記号や言い回しに慣れていくとこの定義の意味も理解できるようになります。

数学記号や用語、特有の言い回しに関してはこちらの本を読むのをオススメします!

連続性、収束を厳密に理解することが初めの一歩!

極限の定義ができると微分の定義もできます。
高校の数学IIでも同様の定義式に触れたと思いますが、極限(\(\lim\))の定義を理解してやっと微分の定義も理解できたと言えるでしょう。

定義(微分可能性
点\(a\)を含む区間上で定義された関数\(f(x)\)が\(x=a\)で微分可能であるとは

$$\lim_{x \to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}$$

が存在するときにいう.このとき

$$f'(a)=\lim_{x \to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}$$

と書き,\(f(x)\)の\(x=a\)における微分係数という.

一変数の微分積分(テイラー展開、積分の定義、広義積分)

テイラー展開

微分の定義もなかなか難しいところですが、ざっくり言えば微分とは「微小に分けて」考えるため「とても小さい量」を厳密に扱うことが考えます。
その応用として、関数を有限個の項を用いて近似することができるテイラー展開が考えられます。

$$sinx=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots$$

感覚的にはテイラー展開を使うと、関数を「大きい量と小さい量」に分解できる感じです。

$$f(x)=(大きい量)+(中ぐらいの量)+(さらに小さい量)+(さらに微小な量)+\cdots$$

関数を厳密に分解して近似ができるので
物理学など動きを表す式が複雑になってしまう場合に、
このテイラー展開を使って近似的な式として使うことができます。

積分の定義

高校数学では積分は微分の逆として習い、積分で面積が計算できるという流れで習いました。
しかし、実は不定積分の計算と面積を求める計算(定積分)は別々に考えられたものであり、不定積分と定積分の計算は同じような計算しているよね!という話になります。

不定積分・・・微分の逆

定積分・・・・面積を計算する道具

大学数学ではその流れで積分について学び
さらにそもそも面積とは何なのか?という面積の定義から考えて
積分に関しても厳密な定義のもとで議論が進んでいきます。

2変数の微分・積分(重積分)

高校までは\(x\)について微分積分の計算問題を解いてきましたが、
大学では\(x,y\)と2つ変数がある2変数の微分の計算もします。

どのように計算するかというと,どちらかの変数について微分する偏微分という計算をします。
例えば\(f(x,y)=xy^2\)の\(x\)についての偏微分は\(y\)はただの定数と見て微分します。
逆に\(y\)についての偏微分は\(x\)はただの定数と見て微分します。

ちなみにどちらも変数として考える全微分もあります。
計算は偏微分を組み合わせた感じの計算になり、少々難易度は上がりますね(^^;;

2変数の積分も計算できます。

多変数関数の積分(2重積分
領域\(\ D \)が\( D=\lbrace(x,y)|a\leq x \leq b, c \leq y \leq d \rbrace\)と表されるとする.
\(\ f(x,y) \)の領域\(\ D \)における積分は

$$\int\int_{D}=\int_{c}^{d}\Biggl( \int_{b}^{a}f(x,y)dx\Biggr)dy.$$

または

$$\int\int_{D}=\int_{a}^{b}\Biggl( \int_{c}^{d}f(x,y)dy\Biggr)dx.$$

この2重積分は領域\(\ D \)の上にある部分の体積を表していることになります。

無限級数

高校でも数学Ⅲで扱いますが、数列\(\{a_n\}_{n=1}^{\infty}\)の各項を前から順に加えたものを無限級数といい\(\sum\limits_{n=1}^{\infty}a_n\)と表されます。
大学では無限級数のことを単に「級数」ということもあります。

数を無限に加えることで様々な面白い等式が得られることが知られています。
例えばライプニッツの公式といって

$$1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\frac{1}{9}-\cdots=\frac{\pi}{4}$$

というように奇数の逆数にプラス,マイナスを交互につけて加える続けると\(\frac{\pi}{4}\)に収束します。また無限個の数を足していく順番を変えると値が変わることもあります。
(こういう級数なら順番を変えて足しても結果が変わらないぞ!というパターンもあります。)

大学数学ではそんな数を無限に加えていく級数の基本的な性質を学んでいきます。

さらに進むと・・・

解析学の応用分野として微分方程式やベクトル解析など物理現象を解き明かすのに利用できる分野や、複素解析など様々なものがあります。
(もっといろんな分野があるのですが、特によく耳にする分野を挙げます。)

微分方程式

微分方程式とは\(y\)が\(x\)の関数のとき、\(x\)と\(y\)と\(y\)の導関数\(y’\)を含む方程式のことを言います。
例えば以下の方程式です。

微分方程式の例

$$y’=2x+1$$

$$y’=3x^2y$$

$$y”+y’+x=e^x$$

微分方程式も自由落下・振動・流動など様々な物理現象を解き明かすのに利用されます。
つまり、微分方程式を理解することで物理に関して深く理解をすることができます。

複素解析

実数上で計算・議論されてきた微分や積分、微分方程式などを複素数まで範囲を伸ばして考えてみようという分野です。
こちらも物理学にも応用されますが、整数の性質を解き明かす解析的整数論にも応用されます。
少し話が広がりますが、解析的整数論ではゼータ関数が有名な関数の1つです。

リーマンゼータ関数

\(s\)を複素数,\(n\)を自然数とするとき,

$$
\zeta (s) =\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{s}} 
$$

で表される関数をリーマンゼータ関数と呼ぶ.

ゼータ関数によって素数分布など素数の性質を解き明かしてくれます。
特に有名なのが素数定理で、素数がどれくらいの数あるのかという割合のようなものを導き出してくれます。定理の数式にはゼータ関数は直接ありませんが、この素数定理を導き出す証明の1つにゼータ関数が使われています。

素数定理

\(x\)以下の素数の個数を\(\pi(x)\)と表すとすると,

$$
\pi(x)\sim\frac{x}{logx} 
$$

で表される関数をリーマンゼータ関数と呼ぶ.

解析学のオススメ参考書

理工系の微分積分学

「理工系の微分積分学」です。

数学科1、2年生のときに補助で読んでいた本です。
演習問題が章末に多くあって、練習するのに助かりました。

複素関数入門

「複素関数入門」です。非常にお世話になりました。
丁寧だけどコンパクトに…きっちり説明がまとめられた本だと思います。
読んでいて気持ちがいいです。表紙も中身も綺麗で品があります。
解説も丁寧なので、解析学を初めて勉強する方には持ってこいの本だと思います。

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