【数学科卒業生が解説】代数学とは?何に使うか?ざっくり概要をわかりやすくまとめ【参考書も紹介】

大学数学
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こんにちは、くれあです。
本記事では代数学で学ぶ内容について解説します。

この記事で解決できる疑問
  • 代数学はどんなことを学ぶのか知りたい
  • 代数学って何に役に立つの?
  • 勉強しやすいおすすめの代数学の参考書を探している

私自身、大学数学科→大学院数学専攻を卒業してます!
子供の頃から算数・数学が好きで大学&大学院と6年間高度なレベルの数学を学んできました。

また、独学で数学を学びたい方も何から手を付ければいいのか分からないことも多いです。
大学レベルの数学を学ぶギャップについてはこちらの記事でも紹介しています。

そこで、大学レベルの数学の最初の一歩のところをお話ししようと思います。
数学科で学ぶ数学は大きく分けて代数学・解析学・幾何学の3分野に分かれます。
この記事ではそのうちの1つである代数学について紹介します。

代数学は、方程式や関数の性質を解明し、数の代わりに文字を用いて方程式の解法などを研究する学問です。方程式の解法や代数的な表現方法、群論・環論・体論など、代数学の応用的な分野まで紹介します。

皆さんの大学数学を学ぶギャップを埋められるお助けになれれば幸いです。
それでは見ていきましょう。

代数学とは

数の代わりに文字を用い、計算の法則・方程式の解法などを主に研究する学問

代数学では、数式や方程式の解法や変形、代数的な演算や操作、そして数学的な構造や関係性の理解が中心的なテーマとなります。

具体的には、数の性質や演算法則、方程式の解法、多項式の操作、行列やベクトルの性質、群や環といった代数的構造の研究などが行われます。
代数学の基本的な概念には、数の四則演算(加算、減算、乗算、除算)、因数分解、指数・対数の法則、等式や不等式の解法、線型代数などが含まれます。

代数学を学ぶ初めの一歩として、「線形代数学」を数学科で大学1〜2年生で学ぶことが多いです。

線形代数学で学ぶこと(大学1〜2年)

線型空間と線型変換を中心とした理論と応用を研究する代数学の一分野です。
線形代数学の学習により、以下のような内容を習得することができます。

行列と行列演算

行列の概念、行列の演算(加算、乗算)、行列の性質(逆行列、転置行列、対称行列など)、行列式や固有値・固有ベクトルについて学びます。
行列は線型方程式や変換行列の表現など、様々な応用で重要な役割を果たします。
簡単な例だと、中学で習う連立方程式を行列を用いて解くことができます

下記のように数や文字を並べて、括弧で囲んだものを行列といいます。

$$
\begin{pmatrix}
-1 & 2 \\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
-1  \\
5  \\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
2 & 3 \\
9 & -4 \\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 3 & 5 \\
2 & 4 & 6 \\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a & b \\
c & d \\
\end{pmatrix}
$$

(例題)

$$
\left\{
\begin{array}{ll}
5x+3y & =7\\
2x+y & =3
\end{array}
\right.
$$

この連立1次方程式を行列を用いて表すと

$$
\begin{pmatrix}5 & 3 \\ 2& 1 \\ \end{pmatrix}\begin{pmatrix}x \\y \\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}7 \\3 \\ \end{pmatrix}
$$

係数行列$${\begin{pmatrix}5 & 3 \\ 2& 1 \\ \end{pmatrix}}$$について$${5\cdot1-3\cdot2=-1\neq0}$$
よって,係数行列は逆行列をもち

$$
\begin{pmatrix}5 & 3 \\ 2& 1 \\ \end{pmatrix}^{-1}=\frac{1}{-1}\begin{pmatrix}1 & -3 \\ -2& 5 \\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-1 & 3 \\ 2& -5 \\ \end{pmatrix}
$$

したがって

$$
\begin{pmatrix}x \\y \\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}5 & 3 \\ 2& 1 \\ \end{pmatrix}^{-1}\begin{pmatrix}7 \\3 \\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-1 & 3 \\ 2& -5 \\ \end{pmatrix}\begin{pmatrix}7 \\3 \\ \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}2 \\-1 \\ \end{pmatrix}
$$

ゆえに\(x=2,  y=-1\)

このように行列を用いて連立方程式を解くことができます。
ただ、変数が2つの連立方程式なら中学で習った、加減法や消去法でも簡単に解くことができますが、変数が3つ、4つ…となると加減法や消去法では途中でどこまで計算したか混乱しがちです。

そのように複雑な連立方程式を考える時に行列は大変有効な道具になります。

行列は多変数関数を紐解くのにとても便利!
※多変数関数…変数が複数ある関数

線型写像

線型写像の定義と性質、線型写像の行列表示、核と像、基底の選び方と座標変換、行列の相似変換などについて学びます。線型写像の定義は以下です。

線型写像
ベクトル空間\(V,W\)に対して
\(V\)から\(W\)への写像\(f:V→W\)が線型写像であるとは以下の2つを満たすことである.

$$a,b \in Vに対してf(a+b)=f(a)+f(b).$$

$$a \in V, c \in \mathbb Rに対してf(ca)=cf(a)$$

線型写像はベクトル空間間の関係を捉えるための重要な概念であり、ベクトル解析や物理学、工学などで現れる線型性を扱う際に重要です。

ベクトル空間の理論

ベクトルの演算や性質、ベクトル空間の定義や性質、部分空間、基底と次元、線型独立性、生成空間などについて学びます。ベクトル空間の理論は多くの数学分野で基礎となる概念であり、物理学や工学、経済学などの応用分野でも重要です。

線形代数は行列やベクトルを用いて多変数関数を紐解いたり、変換について深く学ぶことができるので、
関数が登場する統計学、物理学、経済学など様々な分野で応用できます。

ベクトル空間の定義や例などは、話そうと思うととても長くなってしまうので
オススメの動画のリンクで割愛させていただきます(^^;;

群論・環論・体論

群論

群論は、集合と演算の代数的な構造である「群」を研究する数学の分野です。
群は、閉じた演算、結合法則、単位元、逆元を持つ集合として定義されます。
群論では、群の性質や構造、群同型などを研究し、群の作用や表現論なども重要な分野です。
群論は数学のさまざまな分野に応用され、物理学や化学などの自然科学においても重要な役割を果たしています。

環論

環論は、集合と2つの演算(通常は加法と乗法)の代数的な構造である「環」を研究する数学の分野です。環は、加法に関してはアーベル群を形成し、乗法に関しては閉じた演算と結合法則を持つ集合です。
環論では、環の性質や構造、イデアル(特殊な部分環)や商環、剰余環などを研究します。
環論は、代数幾何学や数論、符号理論などで重要な役割を果たしています。

体論

体論は、集合と2つの演算(加法と乗法)の代数的な構造である「体」を研究する数学の分野です。
体は、加法に関してはアーベル群を形成し、乗法に関しては非零元全体がアーベル群を形成し、乗法に対して分配法則を満たす集合です。
体論では、体の性質や構造、拡大体、代数的閉体、体の分離拡大などを研究します。
体論は、代数方程式の解の存在や一意性を調べる代数学の基礎的な分野であり、数論や代数幾何学、量子力学などにおいても重要です。

さらに進むと・・・

 ガロア理論

抽象代数学の一部であり、19世紀のフランスの数学者エヴァリスト・ガロアによって発展した理論です。
体論の応用としてガロア理論が研究できます。ガロア理論は、代数方程式の解の存在と一意性に関する性質を紐解くことが出来て、幾何学的構造を解析するために幅広く応用されています。

ガロア理論の応用として、代数方程式の解析、幾何学、暗号理論などが挙げられます。
ガロア理論は、代数方程式が解を持つかどうか、また解がどのような式で表すことができるのか追求するのに役立ちます。有名な結果として、5次以上の一般的な代数方程式は一般的な数式で解くことは不可能であることが分かっています。

代数的整数論

整数環や代数的数体などの代数的構造を用いて整数の性質を研究する理論です。
代数的整数論は、整数の代数的性質に焦点を当てることで、代数学的手法を使って整数に関するさまざまな問題を研究します。代数的整数論も暗号理論、数論幾何学が応用として挙げられます。
また有名なものだと、「フェルマーの最終定理」の一部の場合の研究や「ゼータ関数」の研究も挙げられます。

フェルマーの最終定理

\(n\)が3以上の自然数のとき,

$$
x^n+y^n=z^n 
$$

を満たす自然数\(x,y,z\)は存在しない

代数学のオススメ参考書

線型代数入門 (基礎数学)

線型代数の標準的なテキストです。
平面および空間のベクトル、行列、行列式、線型空間、固有値と固有ベクトルなど基本的な内容を学ぶことができます。各章末に演習問題、巻末に略解もあります。
日本数学会出版賞受賞。

線形代数講義

数学科1年生のときに補助で読んでいた本です。
演習問題が多くあり、練習するのに助かりました。
独学で読むのには難しいというレビューもあるので、基本事項を学んだ上でもう少し補足で勉強したいという方には参考書として使うのが良いと思います。

代数学1 群論入門 (代数学シリーズ)

大学で学ぶ代数学シリーズの第1冊目。
代数学の基礎である群論を、初心者向けに丁寧に説明された本です。
私自身も初めて群論を学ぶ時に読んでいました。

代数学2 環と体とガロア理論 (代数学シリーズ)

大学で学ぶ代数学シリーズの第2冊目。
「群論入門」に引き続き、環、加群、体からガロア理論までを、
豊富な例と丁寧な解説で「環」や「体」がどういうものなのか描かれています。

代数学3 代数学のひろがり

大学で学ぶ代数学シリーズの第3冊目。
テンソル代数、無限次ガロア拡大など、諸分野で必要となる発展的な話題を幅広く扱う。

数学ガール/ガロア理論

方程式の解の公式から、定規とコンパスの作図問題、それらを取りまく群と体の解説を経て、
ガロア理論への理解に向かいます。
「数学ガール」の他シリーズと同様、「僕」と4人の少女たちが大活躍します。
シリーズの読者はもちろん、数学に関心をもつすべての読者に最良の一冊です。

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